FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

「エルサレム」亭の静かな対決/マーサ・グライムズ

「エルサレム」亭の静かな対決 (文春文庫)

「エルサレム」亭の静かな対決 (文春文庫)

 シリーズ五作目。
 クリスマスの五日前、リチャード・ジュリー警視は雪の墓地で出会った女性ヘレン・ミントンに、ただ一度出会っただけで恋した。そしてそのただ一度の出会いののち、ヘレンは死んだ。
 シリーズ中、幾度か恋する(時には事件関係者に)ジュリー警視だが、ロマンスの相手がこれほどあっさり退場したのは、おそらく初めてではないだろうか。生きている彼女の姿を読者が見る(読む)ことができるのは、そこそこ厚さがある文庫本の中で、最初の一部である。後はヘレンは人々の回想の中に出てくるか、話題の中に出てくるかのみである。しかしクリスマスを控えた村、雪の舞う墓地での出会いという清浄で儚いイメージと、よく似合っている。
 貴族や芸術家を集めた大豪邸のパーティーで、さらに殺人事件が発生し、どうやらその殺人事件は薄幸のヘレンの死とも関わりがあるらしい。
 アメリカ人の作家が書いた、いかにも英国ミステリらしいミステリ。