FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

「鎮痛磁気ネックレス」亭の明察/マーサ・グライムズ

  

「鎮痛磁気ネックレス」亭の明察 (文春文庫)

「鎮痛磁気ネックレス」亭の明察 (文春文庫)

 リチャード・ジュリーものの邦訳、第三作目。この巻の最初で、ジュリーは警視に昇進する。
 初期は、結構本格ミステリしているじゃありませんか。シリーズの中盤以降に発表された作品は、殺人など犯罪は出てくるものの、ミステリというよりも、物語として楽しんだ方が適切な巻もままあるため、余計にそう感じた。
 リトル・バーンテンハムは、ロンドンのベットタウンであるのどかで、小さな村だ。だがこの平穏な村は、幾つかの奇禍に見舞われることとなった。まずは事実無根(だと思われる)中傷の手紙が村人達に届き、彼らの神経を逆撫でした。そして犬が、女性の指がくわえて現れ、皆を驚愕させた。ロンドン警視庁警視リチャード・ジュリーは村まで足を伸ばし、村の警官達と協力して捜査を進める。この指の持ち主、つまりは殺人事件の被害者は誰なのか。それは中傷の手紙と関わりがあるのか。若い音楽家が背後から頭を殴られ、重傷を負った事件との関係は。
 訳者によるあとがきで、マーサ・グライムズの作風は、パトリシア・モイーズ『殺人ファンタスティック』と似ているとあるが、確かにモイーズの穏健さ、温かみが、このミステリにも感じられる。
 これまでに読んだ、彼女の作品群(シリーズ三作目以降のリチャード・ジュリーもの)の中ではもっとも面白かった。