FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁/マーサ・グライムズ

「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁 (文春文庫―警視リチャード・ジュリー)

「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁 (文春文庫―警視リチャード・ジュリー)

 リチャード・ジュリーもののシリーズの邦訳の八冊目。順不同で読んでいるのだが、最初の数冊を手に取ったときは「特別面白い」とは思わなかった。だが『鎮痛磁気ネックレス」亭の明察』とこの『「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁』はいい。
 名探偵の休暇は休暇にならぬ。古今東西の名探偵に襲いかかる忌まわしい慣習が、ロンドン警視庁警視リチャード・ジュリーの上にも降りかかった。ときは五月、田舎の村へと友人メルローズ・プラント(この人もレギュラーキャラクターで、元貴族であり、リチャードの相方的存在)を訪ねた彼は、アンティークの書記机に押し込められた死体を発見することとなる。土地の名家の子女の夫で、芳しからぬ品行で知られた男だ。やがて同時期に港町で身元不明の女性の死体が発見される。
 真相が明かされる部分で、もう少し説明がすっきりしていたら完璧だ。きちんと本格ミステリしている。核となる女性も魅惑的に描かれている。なかなか良かった。