幽霊の2/3 /ヘレン・マクロイ
- 作者: ヘレン・マクロイ,駒月雅子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/08/30
- メディア: 文庫
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長年の間、ヘレン・マクロイの幻の名作と呼ばれていた作品である。幻の名作と呼ばれる作品の実態は色々だ。「なぜこの創作物がもっと手に取りやすくならなかったのだろう。惜しまれる」というものから、「幻のままでいれば良かったのに」まで様々だ。
この『幽霊の2/3』は、微妙なところだ。ヘレン・マクロイのファンの一人ととして、このミステリの復活は嬉しい。だが作品の出来栄え自体は凡作ではないが、傑作とまではいかない。マクロイの詩的で洗練された文章、殺人事件以外が持つある謎などが魅力的だからだ。マクロイは優れた作品が他にもあるから、彼女の代表作とも言えない。
出版社社長の邸宅で行われたパーティー。エージェントや批評家などが集まったこのパーティーで、人気作家エイモス・コットルが死んだ。彼は私的な問題を一つ抱えていた。女優である妻ヴィーラとの関係。別居していた彼女がエイモスの元へと戻ってくるというのだ。ヴィーラとともにいると、エイモスは悪い酒に溺れ、ものが書けなくなる。
心理ミステリとしてもどうも弱く、そのせいで犯人当ての部分の展開がいささか唐突に感じられる。
復刊されたことは素直に嬉しい。『殺す者と殺される者』も待っています。