雪だるまの殺人/ニコラス・ブレイク
- 作者: ニコラス・ブレイク,斎藤数衛
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1961/04
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ある荘園当主の子息たる双子の幼い兄妹。無邪気に雪と戯れる彼らの前で、雪だるまが崩れ去り、その中に死体が詰め込まれているのが見えた。
ショッキングで、しかも絵画的な美しさを持つ冒頭場面。だが物語の幕が開き、どれほど話が進んでも、この「雪だるま」の場面が出てこない。「はて?」と首を傾げていると、最後で思わずにやりとする。こういうことだったのか。
私立探偵ナイジェルは、妻であり探検家でもあるジョージアとともに、イースタハム荘園を有するレストリック家の客となっていた。ジョージアのいとこでもあり、レストリック一家の友人でもあるクラリッサの頼みだ。彼女はこの名門でなにか悪いことが起きるのではないかと案じていた。やがてクラリッサは悪い予感は的中する。当主ヒヤワドの妹、情熱と自堕落さを同時に感じさせるエリザベスが死んだのだ。レストリック家の家族、そして来客達は愕然とする。
冬なので冬らしいミステリを。懐かしい感じの、良き英国の本格ミステリである。地味で、どこか蒼然としており、だがそこがいい。事件そのものに物凄い意外性があるわけではないが「雪だるま」絡みの構成が楽しく、また全体的に品格がある。