FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

要塞島の死/レーナ・レヘトライネン

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 『雪の女』、『氷の娘』に続くフィンランドで人気の〈マリア・カッリオ・シリーズ〉、邦訳三作目。原作では六作目に当たるという。
 今更言うことではないかもしれないが、ここ数年で以前とは比較にはならないほどの数の北欧のミステリが翻訳され、日本で発売されている。そしてこれまた今更言うことではないかもしれないが、そしてすべての作品がそうだというわけではないが、北欧のミステリ群には大きな特徴があることが分かった。
 登場人物の私生活が、そして彼らを取り巻く人間ドラマが、とにかく詳細に書き込まれている。これには良し悪しがあり、中にはそちらに比重が偏りすぎて、肝心の謎と解決の場面がなおざりになっている哀しいケースもある。そして謎と解決よりも、登場人物の私生活を書いた場面の方が面白いという、倒錯した作品もある。
 この『要塞島の死』は後者だ。富豪の一族の間で起きる連続殺人事件、しかもかつて舞台となっている島で起きた、マリアのかつての恋人の事故死も関連しているかもしれない……と言う魅惑的な内容だが、ありがちな「謎と解決」よりもよほどびっくりするような展開が作中で待っている。
 これはシリーズを順番に読んでいる読者ほど衝撃は強いだろうし、三作読んだだけの日本の読者である私もびっくりしたのだから、多分フィンランドでシリーズ六作目として読んだ本国の読者はさらに驚いたと思う(何作目から登場しているか、分からないが)。
 『要塞島の死』は、一児の母となったマリアが夫や娘とともに、休暇を楽しむため、かつて要塞として使われた島を訪れる。その島は、かつてマリアが短い期間恋人として付き合った鳥類学者が事故死した島だった。やがて、休暇が終わり、警部という新たな役職で職に復帰するものの、島の持ち主である一家の当主が死体で発見されたという。
 前述の通り十分に驚いた、ミステリ以外のところで。
 もう少し謎解きでも、読者を魅了させて欲しい。

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