FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

殺人を一パイント/アリサ・クレイグ

殺人を一パイント (創元推理文庫)

殺人を一パイント (創元推理文庫)

 シャーロット・マクラウドが別名義で書くコージー・ミステリのシリーズの第一作目
 カナダの片田舎の町。失恋し、傷心を抱えつつ兄夫婦の経営する農場に滞在しているうら若き娘ジェネット。彼女は大好きな隣人アガサが亡くなったと知り、仰天した。村の医師は食中毒が原因だと判断した。しかしジェネットは納得できなかった。アガサは老齢と言えども矍鑠としており、またあることが原因で食べ物にはとても注意深かったから。やがて村では立て続けに人が死に、警察署長(自動車修理工及び鍛冶屋も兼任している)オウルスンも不審を感じ、カナダ騎馬警官隊の一員マドックを呼び寄せる。
 良きコージー・ミステリであり、良きヴィレッジ・ミステリである。謎とその解決もそこそこうまくできている。ジェネットとマドックはあっという間にうまく行ってしまうので、ロマンス部分には書くべきことはあまりない。犯人と某登場人物との対決のシーンが怖い。締めのシーンでのマドックの、「**は○○が実際に行った犯罪よりも、行わなかったほうのことで心に深い傷を負ったようです」の台詞には、このミステリでが描かれた事件の本質を巧みに現していると感じられる。