FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

盗まれた御殿/シャーロット・マクラウド

盗まれた御殿 (創元推理文庫)

盗まれた御殿 (創元推理文庫)

 旧家出身のうら若き未亡人セーラ・ケリングとその恋人、美術品鑑定家であるマックス・ビターソーン、二人が巻き込まれる殺人事件の数々を、洒落た筆致で描いたコージー・ミステリのシリーズの第三作。彼らのロマンスも楽しめる。
 セーラはボストンの歴史ある家柄の出身なのだが、変人の親戚がわんさかいる。マックスは美術界に身を置くものであり、その世界に属する奇人の知り合いがうじゃうじゃいる。毎回毎回二人の親戚、旧友、知人のおかしな人間達が出てきては大騒動を繰り広げる(もっともマクラウドの作品としては、てんやわんやの描写がまだ控えめな方のシリーズである)。多くの場合、二人のロマンスも、殺人事件の調査もひっかき回される。
 孔雀の歩きまわる、「マダムの御殿」と呼ばれる一風変わった美術館。ここで演奏会が開かれたとき、事件は起きた。古株の警備員が墜死したのだ。事故か、事件か?
 元女優でイコン偽造の名手である伯爵夫人から、盗難画の専門家まで癖の強い人間が次から次へと顔を出しては、セーラやマックスを暴風雨の中にへと引き込んでいく。時にはセーラやマックスの方が彼らを暴風雨の中へと引っ張り込むこともある。
 犯人はありがちだが、そこそこ面白い。