FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

スープ鍋につかった死体/キャサリン・ホール・ページ

スープ鍋につかった死体 (扶桑社ミステリー)

スープ鍋につかった死体 (扶桑社ミステリー)

 料理名人フェイスのシリーズ、邦訳では第七作目。もっともこのシリーズ、邦訳の順と、刊行された順が違うらしく、作品内のフェイスの語りと子供のベンの年齢、そして訳者によるあとがきから察して、おそらく原作ではシリーズの二作目か三作目当たり、結構早く書かれた作品ではないだろうか。
 高級老人ホール、ハバート・ハウス。十九世紀の大富豪の邸宅を改築されてできたこの施設には、なにかしら隠された秘密があった。伯母からその話を聞かされたフェイスは、職員と間違えられたのを契機に施設の内側に入り込み、調査を開始する。やがて彼女は亡霊を見、そして入居者に出くわす。
 かつては豪邸だった老人ホームという舞台の設定といい、幽霊騒ぎといい、真犯人の動機といい、ちょっとゴシック小説風。事件解決ののち、「やれやれこれですべてが終わったか」と安堵したのち、ある人物の狂気をぶつけられるフェイスが哀れである。このクライマックスにはその狂気の表現もうまく、迫力があった。それにしてもこのヒロイン、窮地を大体自分一人の力で脱しているところが好ましい。良き作品。