鬼の跫音/道尾秀介
- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2009/01/31
- メディア: 単行本
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読者の思惑を裏切ることに徹した短編集。「道尾秀介は読者の思惑を裏切ることを狙ってる。だからこうした展開の場合、こうしたオチが来る」と予想できてしまう場合も多いが、それでもおおもと出来がいい。
ただし、話のほとんどが陰惨な雰囲気に包まれており、ラストも救いがないものが多いのだが。
技巧の出来の良さと後味の悪さにかけては「ケモノ」(本当のタイトルはカタカナの「ケモノ」の前に、漢字のケモノ偏が書かれている)と「箱詰めの文字」が双璧だ。
「ケモノ」は、エリート一家でただ一人だけ劣等生の浪人の青年が、刑務所で作られた椅子に隠されたメッセージを知り、その椅子の作った男が起こした事件の真相を知るストーリー。こうくるんだろうなと思ったが、やっぱりきた。予想はできても面白い。えげつない。
「箱詰めの文字」はヒッチコック映画を連想させられる話。作家である語り手の男のもとに、貯金箱を盗んだと語る若い青年が現れる。だが男は貯金箱のことなど知らないと話す。二人の話は段々と貯金箱から離れていく。「どうなってるんだ?」の出だしから、オチまで隅から隅まで嫌な話である。ちなみにこれは褒め言葉のつもりで書いている。
何冊も作品を読み続けていると、さしもの道尾秀介でさえ新鮮味が薄れてくるような印象は受けるものの、やはりいい仕事をしている。「箱詰めの文字」はあらすじをまとめていて鬱な気分になってしまった。
明るさとか癒しとかにはさっぱりと縁がないがお薦め(Sとは結局なにものなんだ?)