FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

黄色の間/メアリ・ロバーツ・ラインハート

黄色の間 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

黄色の間 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 何年も前に読んだことがあるはずだが、内容をよく覚えていなかった。読み返してみると、結構面白い。おそらく邦訳されている彼女の作品の中では、もっとも日本の読者に馴染みやすい作品ないではないだろうか。
 第二次世界大戦の最中、アメリカはメーン州。没落しつつある名門令嬢二十四歳のキャロルは婚約者が戦死し、兄が出兵している悲しみを抱えつつ、使用人三人とともに避暑のため別荘へと向かった(本に書かれている内容を要約しつつ、このあらすじを書いているのだが、どこか没落してるんだ?)今回の避暑行について、キャロルは一つの不安を抱えていた。婚約者ドナルドの父、ヘンリーが別荘の近くに住んでいる。彼は息子の死をいっこうに信じず、あたかもドナルドがただ出兵しているだけのようにふるまっていた。
 やがてキャロルは己の別荘の「黄色の間」でまったく見知らぬ女性の死体を発見、しかも放火の痕跡を見つけて愕然とする。この娘は誰なのか、そして一体なぜここで死んでいるのか。
 やがてキャロルの周囲で不審な事件があい続く。怪我の療養のため、同じ避暑地に滞在する魅力的なデイン少佐が、彼女の調査の手伝いをしてくれる。
 気取ったところの多い、もっと露骨に言うならば有色人種や貧しい人間に対する蔑視がやや露骨な彼女の作品群の中では、その臭みがやや薄れている。展開、犯人ともにそこそこの意外性あり。
 古風は古風ながら、ほど良いロマンス&サスペンスが楽しめる。ラインハート初心者にも、愛読者にも楽しめる作品。