FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ダリアハウスの困った聖夜/キャロライン・ヘインズ

ダリアハウスの困った聖夜 (創元推理文庫)

ダリアハウスの困った聖夜 (創元推理文庫)

 過去の罪は長い尾をひく。
 アガサ・クリスティーのミステリの中で見つけた、大好きな言葉である。クリスティーはしばしば著作の中でこの言葉を用いており、そして回想の殺人や、過去に起きた出来事が現在に大きな陰影を落とすタイプのミステリが、彼女の得手だった。
 キャロライン・ヘインズのサラ・ブースも、まだシリーズは二巻しか邦訳されていないものの、その既刊のどちらも「過去の罪は長い尾を引く」タイプの事件を扱っている。作中でのサラ・ブースの引用、
 堆積した糞は、歳月を経てなお悪臭を放つ。
 えっと……同じことを言っているにも関わらず、なんか全然違う……。
 ミシシッピ・デルタ。サラ・ブースは元名門令嬢であるダリアハウスの女主人。現在は落ちぶれ、屋敷に住み着いた黒人女性の亡霊(生前は、ダリアハウスでサラの曾曾祖母の世話係をしていた)を相棒に貧窮生活を送っている。成り行きで探偵を始めた彼女の元に、依頼人が訪れた。自伝を書こうとしている高名な作家ローレンス・アンブローズ。どうやら彼の自伝には秘密が山盛り、発表されたのならば権力者や高名な人間達が苦しむ類のものらしい。
 そしてミステリの中で、こういったものを書こうとする人間が大抵そうなるように、彼もまた殺人事件の被害者となる。そしてサラは地元の名士達の暗い過去に触れることとなる。
 アメリカでゴシックをやるならば舞台は南部がぴったり。洒落ていて、ユーモアがあって、そしてちょっと嫌な読後感を残すミステリ。ロマンス小説&コージー・ミステリがお好きな方に。