FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

UFOの捕まえ方/柄刀一

UFOの捕まえ方―天才・龍之介がゆく! (ノン・ノベル)

UFOの捕まえ方―天才・龍之介がゆく! (ノン・ノベル)

 該博な知識と、図抜けた知能指数と、莫大な資産と、朴訥な性格を持つ天才、天地龍之介シリーズの十一作目。「サイト門のひらき方」と「身代金の奪い方」と「UFOの捕まえ方」と「見えない共犯者の作り方」の四作が収録されているのだが、この中で「UFOの捕まえ方」が突出して長いので、この本は作者のあとがきにあるよう「長編入りの短編集」となっている。他の短編もそれぞれ読み応えがあるのだが、多くのページ数をさいているだけあり、「UFOの捕まえ方」はすごくうまい。
 幻想的な題材をモチーフに使った謎とその論理的な解決を描いたミステリを数多く書いていた作者だが、今回はUFOというSF的なネタを使っている。しかも政府(自衛隊)の陰謀、宇宙人による誘拐の記憶を持つ男性、内蔵を失った動物の亡骸と、シャンデリアの上にあった人間の死体と、内容ももりだくさんだ。この謎の群の中では誘拐の真相と、人間と動物の殺戮に隠された秘密が素晴らしかった。天地龍之介シリーズ屈指、いや柄刀一の長編作品すべてを見渡しても、ベストテンには必ず入りそうだ。壮大なスケールと、詩情と、論理的な解決をすべて備えた傑作。
 自殺サイトを扱った「サイト門のひらき方」、タイトルそのまま、意外な身代金の奪取方法を描いた「身代金の奪い方」、こちらもタイトルそのまま意外な共犯者を扱った「見えない共犯者の作り方」もそれぞれよき本格ミステリ。総じてレベル高し。