FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

夏の終わりに/ロザムンド・ピルチャー

夏の終わりに

夏の終わりに

 ロザムンド・ピルチャーは世界的な人気のあるロマンス作家。穏やかで温かく健全な作風で、男女の愛のみならず家族愛、さらに広げて一族の内での情愛を描く。またすこぶる風景描写が素敵。
 小説家である父親と暮らす若い娘ジェインが、生れ故郷スコットランドへと戻る理由は色々とあった。弁護士であるデイビッドの来訪があったから。父親が一緒に暮らしたがっている女優が現れたから。なにより、彼女自身がスコットランドを懐かしかったからだ。
 夏の終わりのスコットランド。祖母の住むエルヴィー荘は相変わらず素敵だったし、祖母その人も変わらぬ人間的魅力をふりまいていた。だがジェインがアメリカにいる間に変わったものもあった。気さくで優しい使用人は老いを見せており、また初恋の従兄シンクレアは大人の男性になっていた。
 ロマンスも含めた若い女性の一夏の成長物語。ピルチャーの作品が大抵そうであるよう、読後感も爽やかである。