見つめあうたび/エロイザ・ジェームズ
- 作者: エロイザジェームズ,Eloisa James,立石ゆかり
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2007/04
- メディア: 文庫
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エロイザ・ジェームズは初めて読む作家。ちなみに両親はそれぞれ詩人と短編小説家、御本人はハーバート大学を卒業し、シェイクスピア研究の専門家で、フォーダム大学で教えており、米国ニューヨーク・タイムズのベストセラー作家でもあり、そして家庭にも恵まれているという、あたかも現代もののロマンス小説のヒーローのような万能の女性である。本書『見つめあうたび』はエセックス家の四姉妹をヒロインとしてシリーズもので、初めて日本で翻訳された作品とのこと。
ヒロインが天然ボケというロマンス作品は珍しくもないが、本書はヒーローもヒロインも天然ボケで、別にギャグを発しているわけではないのに、読んでいて変におかしい作品である。
十九世紀初めのロンドン。スコットランド貴族エセックス四姉妹の次女アナベルは社交界デビューを迎え、金持ちのイングランド人と結婚する野心に燃えていた。なぜならこれまでずっと貧乏だったからだ。馬にすべてにつぎ込む父親のせいで、幼い頃から、常に金銭と食料、それらの不足、あるいはいつ不足するかもしれないという心労に追われていた。父親本人に嫌がられようとも、倹約を努めてきたのはアナベルだ。
アナベルは、美しい顔と体と色気に恵まれていたので、金持ち男を捕まえるのはたやすいことのように思われた。しかし彼女のアンテナに引っかかったのは、異様に記憶力の悪い、思い込みの激しい、ひどい貧乏だという噂の、ハンサムなスコットランド人のアードモア伯爵ユアンだった。ところがアナベルは知らなかった。ユアンが大金持ちだということに。
あらぬ噂を流された二人は、名誉を守るため、ヒストリカルロマンスの定石に従い結婚しなければならないこととなり、二人はスコットランドへと向かう。ユアンと愛し合いながらも、アナベルは「これまで貧乏だった、これからもきっと貧乏だ」と心の中で泣いていた。
脱力感とときめきが共存するヒストリカルロマンス。上記のあらすじからも分かるよう、シチュエーションコメディの魅力十分である。
楽しかった。