FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

深紅の貴婦人は真夜中に/ジョー・ベヴァリー

深紅の貴婦人は真夜中に (RHブックス・プラス)

深紅の貴婦人は真夜中に (RHブックス・プラス)

「マローレン・シリーズ」の第三作。ヒロインが、マローレン一族の一員という設定なので、今回はヒロインの受難は少なめである(少なくとも、身内からは鬱陶しいほど大切に扱われている)。
 三作まで読んでようやく分かったのだが、このシリーズ、前巻までの内容が結構出てくるので、できればシリーズを刊行順に読んだ方が望ましい。特にこの『深紅の貴婦人は真夜中に』の主役二人は、それぞれ第一作『仮面に秘めた涙』のヒーローの双子の姉、ヒロインの兄という設定だし、また『仮面に秘めた涙』でヒロインの父親がしでかそうとしたことが大きく影響している物語(これが「過去の因縁」)なので、第一作を読んでいた方が内容をより理解しやすいと思う。
 家族から過保護に扱われ、平和で退屈な人生に嫌気がさしていたマローレン一族次女エルフ。彼女は扮装で本当の姿形を隠し、偽名のリゼットで仮面パーティーに潜り込んだ。ちょっとした冒険心からしたことだったが、最中、とんでもない陰謀を立ち聞きすることになった。エルフは捕まるが、相手を見てぎょっとした。
 過去の因縁により、マローレン一族、特に長兄ロスガー侯爵を深く恨んでいる、ワルグレーヴ伯爵、通称フォートだ。フォートは相手が、敵の一族の娘だとは気付かぬまま、エルフを連れ去った。
 エルフはフォートに惹かれるが、フォートはリゼットとエルフに惹かれるが、エルフは自分が憎まれていると思い込み、自分がリゼットその人であることをなかなか言い出せない。言いだせないまま、フォートは、そしてエルフは、エルフの家族も巻き込んで、ある計画へと巻き込まれ、また立ち向かっていくこととなる。
 『仮面に秘めた涙』では、最後には改心するとは言え、暴力的で、短気で、ろくでもない兄貴だったフォートがヒーローと知り、「むむ」と唸ってしまった。
 まあ、この巻までに、彼の性格もずいぶんと改善されており、ちょっと安心。
 次はロスガー侯爵がヒーローになるんだろうか。

仮面に秘めた涙 (ランダムハウス講談社文庫)

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