令嬢と悩める後見人/エリザベス・ソーントン
- 作者: エリザベス・ソーントン,細田利江子
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2008/07/10
- メディア: 文庫
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エリザベス・ソーントンは、ヒストリカルロマンスに、サスペンスを加えた作風を得意とする作家。本書『令嬢と悩める後見人』もサスペンスの味付けがある。
裕福なフランス人銀行家の孫娘、イギリス人とフランス人の血を引くテッサは、愛する祖父から父の母国イギリスに渡るよう命じられる。欧州で力をふるっているナポレオンとその一族が、彼女の資産に目をつけており、婚姻という形でその遺産を奪おうとしていたのだ。彼女に同行したのは、祖父の秘書ロス。
実はロスはイギリスの貴族で、数年前妻キャシーを失っていた。ロスの子を妊娠していた彼女は、なにものかに溺死させられたのだ。ロスが妻の溺死について調べていると、おかしなことが分かった。八年前に起きたある少女の溺死事件。当時その現場や現場付近にいた人々が次々と生命を奪われているのだ。キャシーもその一人だった。
いまや最後の生き残りとなったのはテッサだった。テッサ本人はその事実は知らないのだが。
思惑を持ちテッサに近付いたロスだが、やがて二人は本当に惹かれ合っていく。
サスペンスとしてはなまぬるいが、訳者もあとがきで指摘しているよう、ロスの元恋人、貧しい生まれから、美貌と知性と意志の強さでイギリスの社交界の華へとのし上がった、敵役のアマンダが印象的だ。邪悪ながら胆が据わっていて、ある意味ではヒロインより魅力的だった。引き際のシーンも見事。
犯人は分かりやすいが、この悪女の存在もあり、なかなか面白い一作だった。