スコットランドの怪盗/サブリナ・ジェフリーズ
- 作者: サブリナ・ジェフリーズ,上中京
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2010/09/28
- メディア: 文庫
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最近スコットランドを舞台にしたヒストリカルロマンスにはまっているから、このサブリナ・ジェフリーズ『スコットランドの怪盗』も、タイトルだけで買った。だが、これが大当たり。「淑女たちの修養学校」というシリーズの中の一冊なのだが、このシリーズ名と、作者サブリナ・ジェフリーズの名前が頭にしっかりとインプットされた。よく考えられたストーリー展開、登場人物の魅力、官能場面の色っぽさ、どれもばっちり。
十九世紀、スコットランド。ハイランドのロス氏族の領主にして準男爵ラクラン・ロスは、ダンキャノン伯爵クェンティン・キャンベルへの復讐心に燃えていた。ダンキャノン伯爵は、ラクランの父親からの巨額の借金を踏み倒し、ラクラン一家と領民の生活を苦しいものにさせた。しかしラクランとその件でまともに話し合おうとしない。業を煮やした彼は、伯爵家に関わりある人間がスコットランドに迷い込むと、己の正体を隠しては脅し、金品を巻き上げ、「盗られたものは伯爵に返してもらえ」とうそぶくようになった。正体を隠した彼はいつの間にか「スコットランドの怪盗」として知られるようになっていった。
だがラクランがさらに効果ある復讐を思いついた。それはダンキャノン伯爵の娘にして、ラクランの幼馴染みでもある令嬢ベニーシャを誘拐すること。誘拐作戦は成功したものの、記憶のあるより遙かに美しく、魅惑的に成長したベニーシャに、むしろラクランの方がふり回される羽目になるのだ。
ヒロインが可愛いロマンス小説はありふれているが、ヒーローも可愛いというものはまれである。大抵ロマンス小説に出てくるヒーローは完璧超人が多く、ラクランのようにややへたれた一面を持つ男性は珍しい(そして好ましい)。
ヒーローが魅力的ならば、それだけでロマンス小説は半ば成功したも同じである。だが、この『スコットランドの怪盗』はお話も面白い。最後まで隠されていた、ラクランの父とベニーシャの父、二人の過去になにがあったかが分かったときには膝を打った。
読み応えたっぷりの傑作。