FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

川は静かに流れ/ジョン・ハート

川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 読了中は大満足。殺人の冤罪を被せられ、故郷を追われたアダムを再びホームタウンへと戻らせたのは、かつての親友からの助けを求める声だった。このありふれた書き出しからのちは物語が二転三転(陳腐な表現で恥ずかしいが……)かつては強い絆で結ばれていたものの、冤罪ゆえに滅茶苦茶となった父との絆、冤罪事件が起きる前から微妙だった義弟(継母の連れ子)ジェイムズとの関係、ずっと可愛がっていた年下の幼馴染の少女グレイスへの慈愛、そしてかつての恋人、今は刑事となったロビンへの愛と苛立ちと混じった思いを軸に物語が織りなされていくのである。
 トマス・H・クックの「記憶」シリーズの主人公をちょっとだけタフにしたような主人公にややいらいらするし、そこまでのストーリーが面白いだけに犯人像の陳腐さがすこし残念だが、これは確かに力作。サスペンス小説が好きなら読んで損はなし。