FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ステンドグラスの少女/マーガレット・マルカインド

ステンドグラスの少女 (ハーレクイン文庫―サスペンス (B-193))

ステンドグラスの少女 (ハーレクイン文庫―サスペンス (B-193))

 「ハーレクイン文庫サスペンス」の中の一冊である。とても正直に言おう。古本屋で手に取るまで、ハーレクイン文庫にサスペンスの分野があることは知らなかった。作者マーガレット・マルカインドの名前も知らなかった。
 しかし読み始めて、のけぞった。凄く面白い。
 アメリカ人女性の若き建築家セリーヌは、ロンドンの画家ダーラムから風車小屋をアトリエに改造して欲しいという依頼を受け、英国はイースト・アングリアに足を運んだ。
 仕事のあいまにイギリスの田舎を楽しむセリーヌ。だがひどく奇怪なものを彼女は目にすることとなった。寂れた教会に飾られたステンドグラス。その中に描かれた少女は、セリーヌと瓜二つだった。住人に聞くと、列車事故で十八歳の生命を失った、土地の名家ノースコートの令嬢アマンダだという。セリーヌにとっては全く知らない名前だ。
 それからセリーヌをなにものかが狙い、襲い始めた。投石、古い建物への監禁。おまけに彼女に仕事を依頼したはずの画家は実在していなかった。彼女は村で知り合った自称教師のイアンという男に恋をするが、彼さえも彼女に秘密を持っているようだ。セリーヌの身の上にふりかかる一連の事件は、かつてノースコート家で起きた宝石盗難事件と関わりがあるのか。
 堂々たるゴシックサスペンス。宝石盗難事件から、「なぜアマンダとセリーヌが瓜二つなのか」という謎まできちんと解明されており、英国ミステリファンの心をも掴む作りになっている。
 読んでて実に楽しかった。残念ながらマーガレット・マルカインドの作品で邦訳されているのは、この一冊だけらしい。慌てて「ハーレクイン文庫サスペンス」の中で、ゴシックサスペンス風のものをチェックする。