FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

独立軍の花嫁/パトリシア・ポッター

独立軍の花嫁 (ハーレクイン文庫)

独立軍の花嫁 (ハーレクイン文庫)

 アメリカ南北戦争やその直後を描いたロマンス小説は何冊か読んだことがあるが、アメリカ独立戦争の時代を舞台にしたヒストリカルロマンスを読むのは初めてである。
 ハーレクイン文庫の一冊として出版されている。当方はこの文庫から出版されているロマンス小説を読むのはまだ二冊目なので、まったくの推量になってしまうけど、おそらくは他の作品よりもロマンス色は薄いのではないだろうか。その分、歴史小説としての味わいが強くなっている。
 アメリカ独立戦争の戦火が広がるサウスカロライナ。イギリスから移住してきた農園主で、イギリス王党派である父親チャタムに、アイルランド系であり、アメリカ独立派でもある恋人ブレンダンを殺され、令嬢サマンサは、父と家を捨てる決意をした。
 一方チャタムによって、父親とともに牢獄船に乗せられ、一人だけどうにか生き伸びたブレンダンの兄コナーは、チャタム一家への復讐を誓った。復讐の対象の中には、弟を誘惑しておき、破滅させた(と聞かれさていた)娘のサマンサも含まれている。
 ぼろぼろの身で独立軍のキャンプを目指し、行き倒れたコナーを救ったのは、サムと名乗る一人の少年。二人は、アメリカ独立派の将校であるマリオン大佐のもとまで辿り着き、彼の部隊で戦うこととなる。
 だが、コナーは知らなかった。なにかとコナーを慕い、世話を焼いてくれる少年サムこそが、仇の娘サマンサの男装した姿であることに。やがてサムが男装の少女であることにコナーは気付き、二人は愛し合うようになるが、サマンサは自分がブレンダンの恋人であり、チャタムの娘であることは言い出せずにいた。
 作中に出てくるマリオン大佐、そしてコナーやサマンサの戦友、ピーター・ホリーやビリー・ジェームズは実在の人物のこと。
 ヒストリカルと名前が付いていても、舞台が過去というだけで、ほとんど現代と雰囲気が変わらないような作品もあふれる中で、実にヒストリカルロマンスらしいヒストリカルロマンス。愛憎劇の要素も多分に含まれているので、甘さは控えめだが、実に読み応えがある。