FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

漆黒の乙女の吐息に/コニー・ブロックウェイ

漆黒の乙女の吐息に (ライムブックス)

漆黒の乙女の吐息に (ライムブックス)

 ここ数カ月の間に読んだロマンス小説の中で、頭一つ分飛び抜けて面白かった。さすがはベテラン、コニー・ブロックウェイ。<マクレアン>三部作のようにシリアスなものも面白いが、コメディも同じぐらいうまい。『漆黒の乙女の吐息に』は、ロマンス、コメディ、サスペンス、もう一つパラノーマルと内容がもりだくさんだが、すべてが上手に並立している。
 十九世紀スコットランド、最初に「ど」がつくほどの田舎町リトル・ファーキン。切手収集に血道を上げる銀行家マッゴーワンや、自称「闇の帝国の支配者」、そして「闇の帝国を支配するのに、様々な問題を抱えている」奇妙な老女ビードルばあさんなど、変人の住人とともに、うら若き乙女アメリー、そしてその家庭教師フランセスカは暮らしていた。実はフランセスカは、動物に関わる超自然的な力を有しており、過去には、夫でいかさま霊媒師アルフォンスとロンドンで降霊会を催して生活していた。しかし弁護士グレイにいんちきを見破られ、アルフォンスに逃げられ、ロンドンを追われることとなった。
 それから六年も経ち、アメリーと姉妹も同然に暮らしていたところ、ロンドンから訪ねてきた男を見て、フランセスカはぎょっとする。甥ヘイデンを伴った弁護士グレイその人ではないか。しかも、彼はアメリーの生命が狙われているという匿名の警告状を手にしていた。
 ヘイデンとアメリーは惹かれ合う。またフランセスカとグレイも惹かれ合うが、フランセスカの過去と不思議な力が邪魔をし、なかなかうまく前に進むことができない。やがてアメリーやフランセスカはなにものかに生命を狙われ始める。
 警告状を出したのは誰か。
 彼女達の生命を狙うのは誰か。
 ラストまでたるむところのない傑作。