ただ魅せられて/メアリ・バログ
- 作者: メアリ・バログ,山本やよい
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2012/01/20
- メディア: 文庫
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ここ数カ月の間に読んだロマンス小説の中で、もっとも面白い作品だった。つい最近までその地位は、コニー・ブロックウェイの新刊『漆黒の乙女の吐息に』だったが、『ただ魅せられて』はそれを超えた。もっとも『漆黒の乙女の吐息に』も、コニー・ブロックウェイの代表作の一つでなるであろう、十分素晴らしい作品である。
この『ただ魅せられて』は、英国の保養地バースの女学校で教壇に立つ四人の女性をヒロインとした傑作シリーズ“シンプリー・カルテット”の完結作品である(それ以前の三冊は、『ただ忘れられなくて』、『ただ愛しくて』、『ただ会いたくて』)
この“シンプリー・カルテット”のヒロイン達は、タイプの違いこそあれ、上品で、理知的で、しかし内側に情熱を秘めていて、それほど実際の身分は高くなくとも、いかにも英国淑女という感じで、同性から見ても魅力的である。
最後のヒロインは、女学校の経営者として校長クローディア。シリーズ既刊で冷静さと威厳、そして貴族嫌いで知られていた彼女の内面がうかがえる。
貴族を嫌う校長クローディア。しかし、彼女はふとしたことで知り合ったアッティングズバラ侯爵ジョゼフと知り合い、互いに好感を抱く。しかし、ジョゼフには侯爵の義務として、身分の釣り合う女性と結婚しなければならなかった。そして、クローディアの眼前にも、彼女の貴族嫌いの原因となった幼馴染みにして元恋人が現れる。
ヒストリカルロマンスの王道の一つ「身分違いの恋」が、繊細な筆致で、情感豊かに描かれる。教師であり、当時としては珍しい女性実業家でもあるクローディアと、すでに貴族の花嫁候補がいるジョセフとの恋は、なかなかうまくは進まない。
この二人の恋の行方も十分堪能できるが、ラストで明かされる、学校に多額の金銭援助をしてくれる、「謎の後援者」の正体にも、思わずにやり。
傑作。品があり、なおかつロマンティックな一冊。
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