FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

死の扉/レオ・ブルース

死の扉 (創元推理文庫)

死の扉 (創元推理文庫)

 真相を知ったとき、脳裏に浮かべたのは、英国女性ミステリ作家の某作品(ジル・マゴーン『騙し絵の檻』)だった。他にも前例はいくつもあるだろう。
 深夜、小間物屋の女主人にして、嫌われ者の老婦人エミリーと、地区を巡回していたスラッパー巡査が殺された。強欲で利己的だったエミリーは、敵にはことかかぬ。スラッパー巡査は、エミリー殺しを目撃したゆえ殺されたのか。
 探偵役を務めるのは、伝統あるパブリック・スクールの歴史教師キャロラス・ディーンとその生徒ルーパート・プリグリー。
 事件の構図は比較的早く掴めるが、実行犯が誰なのかはなかなか分からなかった。が、ディーンを襲撃するというヘマをやった犯人が捕まってから、「第二十六章 関係者全員集合」が始まり、関係者の


 「ここがいつもわしが一番楽しみにしている部分なんですよ。結末の説明によって、すべてにどんな意味があったかがわかる。名探偵の些細な行動に至るまで論理的で、何もかも辻褄 がすっかり合う。わしらを失望させたりしないでしょうな、ディーンさん?」
 「そう願っています」(293ページ)


 の言葉通り、「名探偵、皆を集めてさてと言い」の講釈が始まる(犯人本人はもう捕まっているから、その場にはいないのだが)
 傑作とまでは言えないものの、佳作であり、雰囲気も含め、ユーモアを含んだ英国本格ミステリの醍醐味が楽しめる。手に取りやすくなってなによりだった。