キングを探せ／法月綸太郎

キングを探せ (特別書き下ろし)

　綾辻行人『奇面館の殺人』とこの作品の二冊を読めただけで、国内本格ミステリという分野においては充実した冬だった。
　交換殺人ものの傑作で、ここ数年読んだこのテーマのミステリでは、東川篤哉『交換殺人には向かない夜』に勝るとも劣らない出来栄え。良い意味で、海外の犯罪映画を思わせる洗練された一冊で、各章の前にエピグラフがあるのだが、最終章「ジョーカー」……つまり、もっとも重要な謎解きの部分……で、この『キングを探せ』の冒頭部分が堂々と引用されているのが洒落ている（あまり書くとネタバレになってしまうが、この部分が大きな要となっているのだ）。
　奇妙なニックネームで互いを呼び合い、ある種の籤でそれぞれのターゲットを決めていく男達。一見完璧に見えた彼らのプランだったが、犯人達さえ思いもよらなかったアクシデントが生じてその計画は崩れていき、名探偵法月綸太郎の前にさらされる。
　犯罪の進行と、途中の成功と、最終的な失敗……中途で法月綸太郎、犯人達、読者達の頭に浮かぶであろう「？」マークの創造と、その解決がいかにもスマートである。
　もう一度言うが傑作。

交換殺人には向かない夜 (光文社文庫)