火焔の鎖/ジム・ケリー
- 作者: ジム・ケリー,玉木亨
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/01/27
- メディア: 文庫
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新聞記者フィリップ・ドライデンが探偵役を務めるシリーズ二作目。一作目『水時計』よりはるかに優れた出来栄えだった。帯にある「英国探偵小説の正当なる後継者」という惹句がまさにぴったりだ。
「過去の罪は長い尾を引く」タイプの優れた作品で、「過去の罪の理由」及び「それが現在に影響を及ぼしたうえ引き起こされた事件とその犯人」、どちらもうまく作られている。なにやら男臭いアガサ・クリスティーの作品を読んでいるようだ。
かつてアメリカ空軍の輸送機が、イギリス沼沢地帯の近隣にある農場に墜落した。事件に巻き込まれた、農家の十六歳の娘マギーは、己の生きた赤ん坊を、アメリカ軍人の子で、死んだ赤ん坊リンドンとすり替えた。それからマギーの息子マシューは、アメリカ軍人の息子リンドンとして養育される。
だが、なぜ。
マギーが実の息子を手放した理由は、物語の最後まで語られず、読者と事件関係者の頭を悩まされる。
それから二十七年の月日が経過した。マギーの一家と、いまやアメリカ空軍の少佐となったリンドンとの付き合いは続いていた。
新聞記者ドライデンは、事故で寝たきりとなった妻ローラを案じながら、大旱魃にあえぐ沼沢地帯で起きる様々な事件を調べて回っていた。そんな折、ドライデンは旧知の間柄のマギーに呼び出される。ドライデンや、リンドンや、マギーの娘エステルの前で、マギーはかつての赤ん坊のすり替えを告白したのだ。しかし理由ははっきりと言わなかった。
このマギーの行いの謎とともに、見つけてしまった拷問死体の犯人探しや、不法入国者とその斡旋業者の問題にも、関わりを持つようになっていく。
無駄なピースがほとんど作品。相変わらずの存在感を示している沼沢地帯と、ドランデンとローラとのつたない、だが必死のやり取り、そしてドライデンの「お抱えタクシー運転手」ホルトとの愉快なやり取りなど、読みどころはたくさん。
ぜひともシリーズ第三作目も翻訳・出版されてほしい。
- 作者: ジム・ケリー,玉木亨
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/09/05
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