FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

七匹の蛾が鳴く/フランク・ティリエ

七匹の蛾が鳴く (ランダムハウス講談社文庫)

七匹の蛾が鳴く (ランダムハウス講談社文庫)

 『シンドロームE』を読んでから、気になっていた一冊。何気ない気持ちで手に取ったのだが、これまで読んだフランク・ティリエの作品(『死者の部屋』、『シンドロームE』)より遙かに面白かった。 妖しく、酷いサイコサスペンスで、犯人にも意外性がある。まだ三作品しか読んでいないのに、こんなことを書くのは不適当かもしれないが、フランク・ティリエは『シンドロームE』のように地理的・歴史的スケールの大きな作品より、『死者の部屋』や『七匹の蛾が鳴く』のような、どちらかと言えばこぢんまりとした、そして緻密なサイコ・サスペンスを書く方が似合っているのかもしれない。
 最愛の妻と娘を交通事故で失って以来、精神的な均衡をいささか失ったパリ警視庁犯罪捜査部警視フランク・シャルコ。ある日、シャルコのもとに教会で女性の亡骸が発見されたという一報が入る。全身の毛を剃られ、頭に七匹の蛾がとまった亡骸だ。
 それが昆虫、そして昆虫が媒介する病を巧みに使ったサイコキラーとの対決の始まりだった。虫によってまき散らされる病と犯人の襲撃に怯えながら、事件を捜査するフランク。しかし彼の周囲に、亡き娘に似た不思議な少女が現れ、フランクの私生活と神経は混乱していくのだ。
 昆虫の放つ妖しさが、犯人の殺人方法の酷さと、その正体の意外性が心に残る傑作。

死者の部屋 (新潮文庫)

死者の部屋 (新潮文庫)

シンドロームE(上) (ハヤカワ文庫NV)

シンドロームE(上) (ハヤカワ文庫NV)

シンドロームE(下) (ハヤカワ文庫NV)

シンドロームE(下) (ハヤカワ文庫NV)