FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

すみれ色の想いを秘めて/コニー・ブロックウェイ

すみれ色の想いを秘めて (ライムブックス)

すみれ色の想いを秘めて (ライムブックス)

 『漆黒の乙女の吐息に』に続き、ベテラン作家の熟練の技と貫録が楽しめるヒストリカルロマンス。
 十九世紀、ロンドン。リディアは名門貴族の令嬢で、大変な美女であり、社交界の人気者だ。しかし貧乏だった。理由は、ナポレオン戦争後の株の没落や彼女自身の浪費だ。自分を、そして使用人など周りの人間を救うため、リディアは金持ちの結婚相手を探し始める。
 ネッドは貴族の子息で、元海軍軍人で、大変な美男子で、社交界には馴染めないものを感じている。そして、やはり貧乏だった。理由は、ナポレオン戦争後の株の没落や、甥達の浪費。彼は自分を、そして一族を救うため、ネッドは金持ちの結婚相手を探し始める。
 しかしこの貧乏で、富豪の結婚相手を射とめなければならない美男美女はうっかり出会い、恋に落ちてしまった。だが彼らには、どうしても金銭が必要で、貧しい相手との結婚はできなかった。
 と書くと、なにやら悲恋もののようだが、シリアスな部分はあるものの、それほど暗い物語ではない。ヒロインの友人達など、脇役もよい味を出している。
 コニー・ブロックウェイのすべての作品の中でも、上位に食い込む秀作。
 それにしてもブロックウェイ、シリアスもラブコメもうまい、芸達者なロマンス作家である。現代を舞台にしたもの(コンテンポラリー)が一つ落ちるのが残念だが、邦訳される作品数が増えるが、宝石も見つかるかもしれない。

漆黒の乙女の吐息に (ライムブックス)

漆黒の乙女の吐息に (ライムブックス)

↑これも面白い。