FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

高慢と偏見/ジェイン・オースティン

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

 『ノーサンガー・アビー』ではまったくそんなことはなかったにも関わらず、この『高慢と偏見』では男性キャラクターに地味に苛立つ。
 のちに考えを改めるとは言え、そして現代とは様々な事情が違うとは言え、さらに彼自身は大地主とは言え、ダーシーの自分より身分の低いヒロイン一家に対する驕った態度と色眼鏡に腹が立つ。まさに『高慢と偏見』。ぴったりのタイトルである。
 凡庸な妻の愚かさを観察し笑うことで、味気ない結婚生活をどうにか楽しんでいるヒロイン、エリザベスの父親モラハラ夫にしか見えないし、コリンズ牧師の嫌な俗物ぶりにも凄くリアリティがある。
 相変わらず面白いが、男性キャラクターへの嫌悪感が気になってならなかった作品。マイナスの感情をかきたてる彼らの描写に出くわすたび、唸ってしまった。
 もっともこうした苦さ、辛さが、知性的だが大金持ちとは言えないヒロインが、大富豪で、美男で、理知的な男性と恋に落ち、結婚するという本書を、単なるシンデレラストーリーから隔てているのだろう。
 傑作……なのだが、当方は『ノーサンガー・アビー』の方が好きだ。セス・グレアム=スミスは、ここにどうやってゾンビの要素を混ぜたのか、凄く気になる。
 余談ながら、下巻の巻末に収録されているジェイン・オースティンの年譜を読み、リージェンシーもののヒストリカルロマンスによく登場する摂政皇太子(のちのジョージ四世)が、ジェーン・オースティンの愛読者だと知り、かすかに意外性を感じる。

高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

高慢と偏見とゾンビ ((二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション))

Mr.ダーシーに恋して (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

Mr.ダーシーに恋して (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

↑いずれ読もうと思っている関連作(?)