FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ノーサンガー・アビー/ジェイン・オースティン

ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)

ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)

 無茶苦茶面白かった。十年近く前、オースティンの作品を何冊か手に取ったときは、どれもそれほど面白いとは思わなかったにも関わらず。年月が変わると、読書の嗜好も変わるようだ。
 この『ノーサンガー・アビー』を読むのは初めて。「ゴシック小説を読み過ぎた若い娘が、古風な屋敷に滞在するうち、現実と妄想の区別がつかなくなるというお話」(この痛さにはなんか覚えがあるよ……とほほ)という漠然とした前知識があったのだが、実際に読んでみると、この「古風な屋敷に滞在する」場面は後半に少し出てくるだけで、大部分はリゾート地バースにおける十七歳の平凡な少女キャサリンの恋と友情の物語である。
 キャサリンはどこにでもいる明るい少女。ただゴシック小説が大好きだ。バースでのリゾートに誘われた彼女は、うぬぼれ屋のソープ兄妹、美貌で理知的なティルニー兄妹と知り合う。彼らと、キャサリンの兄ジェイムズを加え、彼らの恋愛・友情関係はややこしいものへとなっていく。
 キャサリンはティルニー兄妹の邸宅ノーサンガー・アビーへと誘われる。かつて修道院だったその屋敷は、キャサリンの愛読するゴシック小説から抜け出したきたようなものだった。ティルニー兄妹の母が亡くなっていると知ったキャサリンは、血生臭い妄想へと浸っていく。
 この作品は、オースティンの実質的な処女作とのこと。『高慢と偏見』を『世界の十大小説』に選んだサマセット・モームは、「大した事件が起こらないのに、ページを操らずにはいられない」と言ったということだが、同じことがこの『ノーサンガー・アビー』にも言える。事件らしい事件が起きるのは、ヒロインの頭の中だけなのだが、読んでいて実に愉快。
 次は『高慢と偏見』だ。

ジェイン・オースティン・コレクション ノーサンガー・アベイ [DVD]

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↑映画もあるんだ