FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

アメリカン・ホーンティング/コートニー・ソロモン監督

 現代のアメリカ、テネシー州。思春期の娘を持つ母親は悩んでいた。娘がなにかに取り憑かれたとしか思えぬ異常な行動を取るためだ。やがて母親は、娘が屋根裏部屋から見つけ出したという手紙に目を通すことになる。そこには十九世紀前半、彼女達が住んでいるのと同じ家で、やはり悪い霊に憑かれたとしか思えぬ娘の異常行動に悩む一家のことが綴られていた。
 この映画の大部分を占める十九世紀のパートは、実際にあった事件を元に作られているらしい。だからホラー映画、幽霊屋敷映画というより、歴史映画として見るべきなのかもしれない。そう言いたくなるぐらい恐怖場面(少女が悪霊と思しきものに襲われ、透明の手でビンタされて金切り声で喚いている場面)がお粗末だった。
 そして歴史に基づいていようが基づいていまいが、いやしくも人に見せて金を貰うのならば、もう少し「話のめりはり」だとか「ストーリーの起伏」だとかを考えるべきではないだろうか。
 十九世紀前半のアメリカに生きる金持ち男は悩んでいた。彼は貧しく、社会的な立場もない初老の女性に、異常なほど高い利子をつけて金銭を貸し、返せそうにもないと知ると、その女の土地を取り上げようとした。当然女性は拒否し、二人の争いは教会で行われる裁判にまで発展し、裁判官は男の課した利子が高すぎる(20パーセント!)として、土地を女性のものとした。裁判には勝ったものの、つらい思いをした女は、男に「呪ってやる」との罵りの文句を吐いた。それから男の一家に、特に娘の身辺に様々な異常が起こるようになった。
 少女を悩ませるもう一人の幻覚、勝手に動く毛布やシーツ、そして酷い悪夢。男は、初老の女が魔女で、呪いをかけているのではないかと疑うようになる。
 こう言ったストーリー、「なにか」が一家を迫害する様子がだらだらだらだらだらと語られる。83分という短さなのに、「長いよ」と感じられるしまうのだから、相当のものだ。おまけに前記のあらすじだから、苦しむ少女やその母親はともかく、父たる男にさっぱり同情できない。
 見る前にストーリーをちらりと聞いたときには、史実が絡んだ、情感あるゴシックホラー映画かと期待していたものの、これははずれ。
 歴史映画としても、ホラー映画としても感想に困る、つまらない映画だった。