FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ウィッカーマン/ロビン・ハーディ監督

 うん、これは怖い。
 後味の悪いことこの上ないラストも怖いが、動物仮面を被った島民の皆さんは、ただいるだけで怖い。そして己と徹底的に異なる価値観を持つもの、そして一つの信仰に凝り固まった人間の持つ恐怖が、真に迫っていて驚異的でさえある。
 こういったホラー映画を見ていると、イギリスでもアメリカでも日本でも、外国の田舎は絶対に行かないぞという気分にさせられる(向こうでも来なくていいよと思っているだろうが)
 十二歳の少女が失踪したという匿名の手紙を受けて、ハウイ警部は飛行艇で西スコットランドの孤島サマーアイル島へと足を踏み入れた。林檎の花咲き乱れるその島は、封建的にもすべてが島の持ち主サマーアイル卿の支配下にあった。そして特異な宗教観に満ちていた。島民のキリストを恐れぬ不遜な態度、そして男女の性の猥雑さは、敬虔なクリスチャンであるハウイ警部の神経を激しく逆撫でした。
 消えた少女のことを、肉親も含めて誰もが知らないと話した。サマーアイル卿と、異教の信仰(ハウイ警部から見れば)とが、彼らの口を閉ざしているのだ。
 島では、豊饒を願う五月祭が行われようとしていた。消えた少女が、祭りの生贄として捧げられようとしているのではないか考えた彼は、勇敢にも祭りへと潜入する。
 傑作。最初はただエッチなだけの映画だと思っていたが、まれに見るべき優れた作品だ。本作ではクリストファー・リーの女装という衝撃的ななにかを見ることもできる。
 2006年にニコラス・ケイジ主演、ニール・ラビュート監督でリメイクもされているが、こちらは見ていない。