ガーディアン／石持浅海

ガーディアン (カッパ・ノベルス)

　勅使河原冴には「ガーディアン」がいる。彼女はそれを幼少時に死に別れた実の父だと考えていた。実際にはガーディアンの正体は、少なくとも読者には分からない。彼女の身を守るなにものかの正体は、誰にも分からない。ただ誰の目にも見えないそいつには、一つの歴然としたルールがあった。自転車がたまたま倒れ掛かる、ボールが偶然飛んでくるといったただの事故には単なる防御壁として機能する。しかし冴に対する直接的にして明確な害意、殺意には、同じく殺意をもってかえすのだ。冴を傷つけよう、殺そうとする人間は、己こそが殺される。
　「勅使河原冴の章」はいつもながらの石持節、冴の仕事仲間だったサラリーマンが死んだ、彼は冴に殺意にを持っていたのだ！なぜ、どうして。謎の設定と解説も、いつも通りの石持浅海である。
　だが栗原円の章になると、その臭みがだいぶ薄れてくる。
　栗原円もまたガーディアンに守られている。中学生である彼女は友人とともに郵便局に向かい、そして強盗事件に巻き込まれた。特定の思想に基づく犯罪者グループの一人である甲田は、彼女を守る力、そのそのルールに気付いた。郵便局の周囲は警察に取り囲まれている。円はガーディアンの守られて友とともに郵便局を無事逃げ出したい、甲田もまた警察に捕まらずこの場から脱出したい、二人の息詰まるような知能戦が始まる。
　『耳をふさいで夜を走る』のごとく狂気作ではなく、普通の石持読者が読んで楽しめる作品。そこそこ面白かった。