FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ナンバー23/ジョエル・シューマカー監督

 動物管理局に勤めるウォルター・スパロウの人生は、真っ赤な表紙の古本を手にした日から豹変した。古本に書かれている、彼そっくりの幼児期を持つ男の話。それは同時に23という数字に囚われ、人生を踏み外していく男の物語でもあった。やがて本の中の男同様、ウォルターは23という数字に取り憑かれ、愛し愛される妻アガサを苦しませる。時計を見ても、日付を見ても、ふと目にしたアパートの番号を見ても、彼には(目にする数字を足したり引いたりとひたすら計算するため)23という数字が浮かんでくるのだ。やがて彼はアガサや息子ロビンを巻き込みつつ、古本の謎を追う。
 他者には狂気としか見えないその姿だが、ナンバー23に隠された意味はあるのかないのか。
 オチは「今日び、ありふれているのからこのオチは使わないだろうな」と皆が考えるようなオチである。しかし、その真実が明かされたのち、主人公の取った行動には好感を持った。案外まっとうに向かい合おうとしているではないか。
 「隠されていた謎」が本当に凡庸であるため、「謎めいた本」ものとしては高評価はできないが、主人公が最後の最後で取った行動のため、点数がぐっと上がった。そこそこ面白い……と言えるだろう。また重要なキーパーソン(キードッグ?)となるへちゃむくれな犬の使い方もいい。
 余談だが、スパロウ一家の作者探索行の際、どう見てもまだ中学生ぐらいであろうロビンをこれほど巻き込む(夫婦が家へ追い返そうとしない)のは、なにか深い意味があるのかな、などと思っていたら別になかったようだ。父親の狂態にも、母親の悲嘆にも流されぬ、ある意味大人物で怖い少年である。いいのか。