スリー・パインズ村の無慈悲な春／ルイーズ・ペニー

スリー・パインズ村の無慈悲な春 (RHブックス・プラス)

　カナダ、ケベック州の山間にひっそりと埋もれるように存在する村、スリー・パインズ村。シリーズものの宿命で、ひどく平和なはずの小さな村で、次々と殺人事件が発生する。謎を解き明かすのは、ケベックの伝説的警部、ガマシュ警部。
　今回は、「降霊会」もの。当然、最中に人が死ぬ。
　しかもこの『スリー・パインズ村の無慈悲な春』では、事件とは関わりのないところで、マスコミでガマシュ警部が中傷され、殺人事件とともにそちらとも、彼は向かい合わねばならないこととなる。
　ガマシュ警部シリーズ第三作。女性ミステリ作家で著名になると、必ず「＊＊＊のアガサ・クリスティー」と呼ばれるが、ルイーズ・ペニーもまた現代のアガサ・クリスティーと呼ばれているそうだ。
　しかし、この『スリー・パインズ村の無慈悲な春』はアガサ・クリスティーよりもＰ・Ｄ・ジェイムズを思わせる。殺人事件が起きる舞台の風景の美しさ、狭く重苦しい人間関係と、それぞれの登場人物の心理を、丁寧な文章で、とても緻密に描く。
一部の人間は最高に惹きつけられ、別の一部の人間にはひどく退屈だと感じられる作風だ。当方は大好きだが、このシリーズをつまらないと思う人間がいても、不思議ではない。
　第二作『スリー・パインズ村と運命の女神』ほどよくできた作品ではないが、シリーズものとしては及第点。

スリー・パインズ村の不思議な事件 (ランダムハウス講談社文庫)

スリー・パインズ村と運命の女神 (ランダムハウス講談社文庫 ヘ 4-2)