FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

アイヴァンホー/ウォルター・スコット

アイヴァンホー〈上〉 (岩波文庫)

アイヴァンホー〈上〉 (岩波文庫)

アイヴァンホー〈下〉 (岩波文庫 32-219-2)

アイヴァンホー〈下〉 (岩波文庫 32-219-2)

 「読んだことのない古典」の一冊。実はウォルター・スコットは生まれて初めて読んだ、集英社の世界文学全集に収録されている「ケニルワースの城」が今一つ面白くなかったので、あまり期待をしていなかったのだが、こちらは実に面白かった。
 勇敢な若者の騎士道と、美姫とのロマンスが中心となった、絢爛たるエンターテイメント小説だ。時代はややずれ、国は違うものの、アレクサンドル・デュマを思わせる(デュマの方が遅い)。主役のウィルフレッドは、架空の人物だが、ロビン・フッド獅子心王リチャード一世など、実在・架空いずれにしろ華やかな脇役達が話を盛り上げる。そして、差別と蔑視の下に置かれたユダヤ人の父娘の存在が、忘れがたい陰翳を落としている。
 しかし「謎の黒騎士」の正体を、上巻の表紙に書かれたあらすじでいきなりばらしているので、それはいかがなものかと感じられる。
 国王リチャード一世が不在のイングランド。王弟ジョンは、フランスと手を組み、イングランドを乗っ取ろうと目論んでいた。その邪まな企みを破らんとするのは、忠義の青年騎士ウィルフレッド。
 オルツィ『紅はこべ』や アンソニー・ホープゼンダ城の虜』といった冒険小説の源流の一つになったであろうと思わせる一冊。Wikipediaを読み、「架空の主人公を歴史的な出来事の中に入れる手法の元祖ともいわれている」と知り、なるほどと膝を打った。
 傑作。


ウォルター・スコットWikipediaはこちら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%88

アイヴァンホーのWikipediaはこちら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%9B%E3%83%BC

世界文学全集〈16〉スコット (1979年)ケニルワースの城

世界文学全集〈16〉スコット (1979年)ケニルワースの城