FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

背後の足音/ヘニング・マンケル

背後の足音 上 (創元推理文庫)

背後の足音 上 (創元推理文庫)

背後の足音 下 (創元推理文庫)

背後の足音 下 (創元推理文庫)

 初めて読む「クルト・ヴァランダー刑事」シリーズで、第七作目にあたる。いきなりヴァランダーは糖尿病を宣告され、食事を中心とした生活のほとんどを変えるように宣告されている。
 こちらはスウェーデンの警察小説なのだが、先日読んだデンマークの警察小説『特捜部Q 檻の中の女』と同じく、「警察小説+サイコキラーもの」という感じである。
 『特捜部Q 檻の中の女』では、刑事達の捜査の場面と、被害者の様子が交互に描かれるが、この『背後の足音』では刑事達の捜査の場面と、殺人鬼との犯罪が交互に描かれる。しかし、殺人鬼の犯行の理由が、当の殺人鬼にしか分からない。よって次に誰が狙われるかも分からない。ミッシング・リングものの面白さを備えた警察小説である。
 夏至前夜、十八世紀の文化を真似た服装や料理で宴を楽しもうとしていた若者たち。彼らはそのまま姿をくらまし、旅に出たと外国から葉書が来た。しかし失踪した若者の母親の一人は「これは我が子の筆跡とは違う」と、事件に巻き込まれた可能性を警察に訴えていた。しかし、刑事達はあまり本気にしなかった。実際に彼らの死体が見つかるまでは。そしてヴァランダーが所属するイースタ警察署の同僚スヴェードベリが殺されるまでは。スヴェードベリは若者の惨殺事件に関与していたのか。
 当方はこのシリーズを読むのが初めてなので、あまり衝撃を受けなかったが、シリーズを通して読んできた人には「なんとレギュラーキャラクターのスヴェードベリが死ぬのか」と驚きは大きかったと思う。
 犯人の空虚さと不気味さは出色の出来栄えで、警察小説が苦手な当方にもなかなか楽しめた。

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)