FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

生還/ニッキ・フレンチ

生還 (角川文庫)

生還 (角川文庫)

 ここ一年ほど、監禁もののミステリをよく読み、そしてやはり監禁絡みのホラー・ミステリ映画を見ているような気がする。
 ミステリ小説で言えばユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Qシリーズの第一作『檻の中の女』しかり、シェヴィー・スティーヴンス『扉は今も閉ざされて』しかり。
 ミステリ映画で言えばジョン・カーペンター監督『ザ・ウォード 監禁病棟』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20120311)、アーサー・ペン監督『冬の嵐』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20120611)だ。
 ニッキ・フレンチ『生還』を読み、もっとも近いと感じたのは、シェヴィー・スティーヴンス『扉は今も閉ざされて』だ。
 双方ともヒロインは、ごく普通の生活を送っていたのに突如として攫われ、囚われ、当然なぜ自分が監禁されたのかよく分からず(シェヴィー・スティーヴンス『扉は今も閉ざされて』のヒロインは、男が単なるストーカーだと思っていたが……実は……)、どうにか監禁生活から脱出できたものの、男の正体がまったく掴めず、ヒロイン達は煩悶する。
 ニッキ・フレンチ『生還』のヒロイン、アビーにいたっては、彼女に記憶の欠如が見られたため、監禁生活そのものが本当にあったことすら、警察に疑われるのだ。
 犯人はまだ逮捕されていない。犯人が、いつまた自分を誘拐するか分からない。アビーは自分の身を守り、記憶を取り戻すため、自力で犯人の調査を始めるのだ。途轍もない不安と恐怖を抱えながら。
 最後まであやふやなところは幾つか残され、爽快感にはやや遠い話の幕は閉じる。いつまでも疼く傷のようなものを残す、苦い味わいの出色のサスペンス小説。
 

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)

特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)

扉は今も閉ざされて (ハヤカワ・ミステリ文庫)

扉は今も閉ざされて (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ザ・ウォード 監禁病棟 [DVD]

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