生還/ニッキ・フレンチ
- 作者: ニッキ・フレンチ,務台 夏子
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ここ一年ほど、監禁もののミステリをよく読み、そしてやはり監禁絡みのホラー・ミステリ映画を見ているような気がする。
ミステリ小説で言えばユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Qシリーズの第一作『檻の中の女』しかり、シェヴィー・スティーヴンス『扉は今も閉ざされて』しかり。
ミステリ映画で言えばジョン・カーペンター監督『ザ・ウォード 監禁病棟』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20120311)、アーサー・ペン監督『冬の嵐』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20120611)だ。
ニッキ・フレンチ『生還』を読み、もっとも近いと感じたのは、シェヴィー・スティーヴンス『扉は今も閉ざされて』だ。
双方ともヒロインは、ごく普通の生活を送っていたのに突如として攫われ、囚われ、当然なぜ自分が監禁されたのかよく分からず(シェヴィー・スティーヴンス『扉は今も閉ざされて』のヒロインは、男が単なるストーカーだと思っていたが……実は……)、どうにか監禁生活から脱出できたものの、男の正体がまったく掴めず、ヒロイン達は煩悶する。
ニッキ・フレンチ『生還』のヒロイン、アビーにいたっては、彼女に記憶の欠如が見られたため、監禁生活そのものが本当にあったことすら、警察に疑われるのだ。
犯人はまだ逮捕されていない。犯人が、いつまた自分を誘拐するか分からない。アビーは自分の身を守り、記憶を取り戻すため、自力で犯人の調査を始めるのだ。途轍もない不安と恐怖を抱えながら。
最後まであやふやなところは幾つか残され、爽快感にはやや遠い話の幕は閉じる。いつまでも疼く傷のようなものを残す、苦い味わいの出色のサスペンス小説。
特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)
- 作者: ユッシ・エーズラ・オールスン,吉田奈保子
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