FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

真夜中の探偵/有栖川有栖

真夜中の探偵 (特別書き下ろし)

真夜中の探偵 (特別書き下ろし)

 いよいよ「少女の(探偵としてのそれを含めた)成長物語」としての雰囲気が強くなってきた、『闇の喇叭』の続巻である。現在の日本とは異なる、パラレルワールドの日本を舞台にしているゆえ、『闇の喇叭』を読んでいないと、戸惑うことが多いかもしれない。
 第二次世界大戦の敗戦の結果、南北に分断された日本。素人の探偵行為は厳しく禁止されており、探偵狩りなるものさえ行われた。
 十七歳の少女、空閑純の両親は優秀な探偵であったが、事情があって、一人は投獄され、一人は行方知れずになっている。しかし純は危険を承知の上で、自分も探偵を志し、高校をやめてアルバイトで生活をしていた。
 陰で父母に仕事を仲介していた人物と知り合った純は、<金魚>と呼ばれていた探偵が密閉された水の箱の中で溺死した事件に出くわす。彼はかつては優秀な探偵だったが、最近ではひどく落ちぶれ、古い知人に金銭をせびることもままあった。純は容疑者の一人とされながらも、謎を追う。
 明神と純の父親の丁々発止がひんやりとした雰囲気を醸し出しつつも、面白い。謎解きそのものは結構単純なトリックを使っているのだが、純に近付こうとするある組織の人間もおり、物語としても目が離せない状況になっている。
 純の母親が現在どういった様子なのか、断片的に示されているのだが、第三作『論理爆弾』では母娘の再会はなるのだろうか。

闇の喇叭

闇の喇叭