FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

世界が終わる灯/月原渉

世界が終わる灯

世界が終わる灯

 『太陽が死んだ夜』で第20回鮎川哲也賞を受賞した作者の、第二作目である。
 『太陽が死んだ夜』は、第二次世界大戦中のニュージーランドの捕虜収容所と、現在の全寮制の女学校という舞台は魅力的ではあるものの、ミステリとしてはいまいち弱いところがあった。この『世界が終わる灯』の方がずっと良くできている。登場人物が前作と一部被っており、『太陽が死んだ夜』の某登場人物の秘密が明かされているので、出版された順番に読むのが無難だと思う。
 ニュージーランドの山間を走る豪華列車。ジュリアンとバーニィ、大学進学を目前とした二人は、この列車に乗って旅を出た。顔見知りとなった乗客の国籍や年齢も様々だった。やがて乗員の一人が、密室で首切り死体として発見される。そして乗員が次々と消え、列車はトンネル内で泊まり、殺人事件は一つでは終わらなかった。
 連続殺人事件よりも、乗員たちが消えてしまう謎の方に魅力があった。社会派の要素もあり、総じてなかなか楽しめるミステリだった。
 余談だが、経歴を見ただけでは分からないものの、前作といい、今回の作品といい、作者はニュージーランドという国に、なにか特別な思い入れがあるのだろうか。

太陽が死んだ夜

太陽が死んだ夜