FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ポゼスト 狂血/アナス・ロノウ・クラーロン監督

 デンマーク産のホラー映画。北欧及び厳寒のルーマニアを舞台にしているせいか、特有の冷たい気品を感じさせ、いい。欧米のホラー映画にしばしば現れるあるテーマを、風変わりに料理している。こんな料理方法もあるのかと感じさせた。
 若き医師ソーレンは、医学生の恋人サラと幸福な日々を送っていた。病院に送り込まれたある患者が有していた、ある謎のウィルスが、彼とサラの運命を変えた。医師としての責務、そして野心にかられた彼は、ウィルスを追ってサラとともにルーマニアに飛んだ。ウィルスの発生源と思われるのは、犬に噛まれて死亡したルーマニアの幼い少年。ソーレンはサラの制止を振り切り、遺族をひどく傷つけるような、違法な手段を用いてでも少年の亡骸からサンプルを取ろうとする。
 一方、デンマークの警察官達は残忍な放火事件に悩まされていた。彼らの目の前に現れたのは、常人の目には狂気としか思えぬ宗教を信ずる神父の存在だった。やがて帰国したソーレンとこの神父が顔を合わせるとき、更なる惨劇が起きる。
 見るものに恐ろしさや忌わしさより、端正な美しさを印象づけるホラー映画。ルーマニアの火葬場のシーンなど実にきれいだった。最初に登場したときから明らかに狂気を感じさせる神父より、坂を転がり落ちるようにして理性を失っていくソーレンの方が怖い。サラはとんだとばっちりである。
 劇中「アメリカ大統領……」云々という台詞が出てきたため、ラストは国外へと出て行くとばかり思っていたので、あのオチにはちょっと驚いた。別になくても良かったかも。