ダリアハウスの陽気な幽霊/キャロライン・ヘインズ
- 作者: キャロラインヘインズ,Carolyn Haines,下山真紀
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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ここ数週間、色んな出版社から出た様々なコージー・ミステリに手を出したが、もっとも面白かったのが、エレイン・ヴィエッツのヘレン・ホーソーンのシリーズと、こちらキャロライン・ヘインズ『ダリアハウスの陽気な幽霊』だった。どちらも同じく創元推理文庫ということで、偉そうな言い方になって申し訳ないが、コージー・ミステリを担当している御方は鑑識眼があると感心しきり。
アメリカ南部。女優の夢破れ、三十三歳のサラ・ブース・ディレイニーは大都会から故郷へと戻ってきた。元は上流階級の出身で、お嬢様の友人達に囲まれて育ったサラだが、現在は借金を抱え、かつての名門ディレイニー家が代々守ってきたダリアハウスさえ手放さなければならないかもしれない状況だ。しかしサラは一人ぼっちいうわけではなかった。館には、南北戦争時代に世話係として仕えてきた黒人女性ジティが幽霊として住み着いてきたのだ。
切羽詰ったサラはジティの提案に乗り、ある悪事をしでかし、金銭を手に入れる。だが皮肉なことにその悪事(友達の愛犬を誘拐。策により、サラ自身が解決したことになっている)が、サラを私立探偵としてデビューさせることに。
サラのかつての友人知人には富豪が多いが、ギャレット家もその一つだ。サラよりやや年上の姉弟がいたが、サラがほんの少女だった頃に、姉は発狂し精神病院へ閉じ込められ、弟はヨーロッパへ送られたとされていた。姉弟の両親はどちらも不審な死を遂げており、姉弟には母殺しの噂が流れていたのだ。やがて弟ハミルトンが町へと帰ってきた。サラは悪名高きギャレット家の事件を過去から掘り返し、真実を探ろうとする。様々な人間に止められながら。
家族にして友、主従にして共犯者、時には皮肉を飛ばし合う敵……幽霊ジティと人間たるサラのパートナーシップがなんとも楽しい。また巻末で若竹七海がゴシック・ロマンスの解説をしているが、このミステリにはそういったジャンルの愛好家の心根を激しく疼かせるものがある。閉鎖的な土地での有閑階級の人間たち、現在にまで影響を及ぼす過去の事件、悪名高きある家族の真の姿……いい!ミステリとしての解決も二重丸を上げたい。少なくともコージー・ミステリとしては上等だ。
次の作品が邦訳されるのが、実に楽しみである。