FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

赤ずきんの森/リオネル・デルプランク監督

 麻薬とセックスにふける若者達が一人、また一人とマスクの殺人鬼に殺されていく典型的なホラー映画のあらすじを、絢爛豪華な映像で魅せてくれる。ダリオ・アルジェントをさらに耽美的にしたらこういった映画になるのだろう。
 寝台に横たわる子のために、『赤ずきん』を読み語る黒衣の女性。彼女は寝室に侵入してきたなにものかによって惨殺される。血と炎と部屋の装飾の赤がとても美しく、同時に忌まわしい幕開けである。
 場面は変わる。女性を凌辱し惨殺する犯人がこの辺りを徘徊している。そんな放送をラジオで聞きながら、若き男女で結成された演劇集団は森の奥へと車で向かっていた。彼らが到着した先は、城館と表現したくなるほど豪奢な家だった。車椅子の主人の依頼は、十歳の孫ニコラただ一人のために『赤ずきん』を演じてくれること。ニコラは無表情で、どうにも感情が読み取ることのできない不気味な子供だった。
 公演そのものはつつがなく終了するものの、やがて狼のマスクを被った殺人鬼が現れ、劇団員達を一人ずつ屠っていく。生き残ったものはなんとか力を合わせてこの家からの脱出を試みるものの、あまりの恐怖と絶望感は彼らから正気を削り取っていった。
 犯人は、大して隠されていないのですぐ分かるだろうが、それでも最後まで見てしまうのは圧倒的な美しさゆえだ。館もきれいだが、虐殺される男女にもきちんと美形を選んでいる(館の主人と孫息子の少年を除くが……)
 最後のオチにもややご都合主義が感じられるし、こいつの正体は結局誰で、なんのために出てきたんだという人物もいることはいるが、これはこれでよし。総じて満足させてくれる作品だった。