FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

4匹の蝿/ダリオ・アルジェント監督

 のちの『サスペリア』や『サスペリアPART2/紅い深淵』ほど耽美的な完成度はないものの、勢いのある、ミステリ映画である。殺しの場面も、まあ他のアルジェント作品に比べればソフトな方である(あくまで比較的だが)
 若く二枚目のドラマー、ロベルトは自分をつけ回す中年男性に悩まされていた。堪りかねた彼は、ある夜、無人の劇場で男を問い詰め、やがて刺してしまう。仮面の人物がそれを見ており、なおかつ写真に映していた。その夜から、ロベルトを脅かすものは、中年男性から、仮面の人物へと変わった。事情を知った彼の妻ニーナ……美しく、莫大な遺産の相続人……は自首を勧めるものの、ロベルトはそれはできない。代わりに、自分自身で脅迫者の正体を突き止めようとする。だが真相に近付いたもの、ロベルトに協力するものに、次々と狂気の殺人鬼の刃が振り下ろされる。
 脇役の変人トリオ、神様、教授、ゲイの私立探偵の発するユーモアが良かった。教授が他の二人と比べ、活躍しなかったのがやや残念である。
 タイトルに蝿が入っているにも関わらず、なかなか作中で触れられないので不思議に感じたが、ラスト直前に出てくる。この使い方がなかなかうまい。なぜ『4匹の蝿』なのか、という疑問が解消されたときにはああと感心した。
 犯人の正体を知ったときも、感心したかったが、できなかった。「この人が犯人だとしたら、あまりにもありふれているし、強引すぎる」と感じられる人が犯人である。ちょっと力が抜けた。
 『歓びの毒牙』、『わたしは目撃者』に続く、動物や昆虫を謎解きに用いた「動物三部作」の最終作。
 ダリオ・アルジェント監督のファンなら満足、それ以外の人間は首を傾げるか、あるいは怒ってしまうかであろう一作。
 当方は満足!

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