ガール・オン・ザ・トレイン/テイト・テイラー監督
ベストセラーになった原作は読んだので内容は知っている。小説を読んだときは「普通の出来栄えのサスペンス小説だな」という感想だったが、映画はとても良かった。どちらかと言えば落ち着いた雰囲気の映画だが、緊張感がとぎれることがない。
片方は水辺、もう片方は美しい住宅地、その間を列車が走っていく風景がとてもきれいで、見るものの心を惹き付ける。
ヒロインの一人、レイチェルはこの列車から一軒の住宅地を見、そこで仲良く暮らす夫婦を見、羨望していた。レイチェル自身はアルコール中毒で、結婚生活が破綻した身だった。レイチェルが羨んでいる夫婦の二軒隣には、かつてのレイチェルが暮らしていた家があり、夫は新しい妻アンと赤ん坊と暮らしているのだ。
ある日、レイチェルは「理想の夫婦」の妻が他の男性と抱き合っているのを列車の窓から目撃、怒りにかられる。やがてレイチェルにとっての理想の妻「メガン」が失踪する。
レイチェルがひたすら危うい。列車から見かけただけの夫婦に理想を(妄想を、というべきか)抱き過ぎだし、メガン失踪ののちには探偵遊戯をはじめるが、アルコール中毒ゆえ記憶に欠落がある彼女は、警察にとっても、事件関係者にとっても、そして観客にとっても「信頼できない語り手」なのである。
このレイチェルがある事実を知って以来(やっぱり電車の中でのことだ)、ストーリーが急展開していく。終盤で「あなたも見ていないでもっと早く警察に連絡しろよ」という突っ込みが脳裏から離れなかった。
傑作である。