FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ガール・オン・ザ・トレイン/テイト・テイラー監督

ガール・オン・ザ・トレイン ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

 

 

 ベストセラーになった原作は読んだので内容は知っている。小説を読んだときは「普通の出来栄えのサスペンス小説だな」という感想だったが、映画はとても良かった。どちらかと言えば落ち着いた雰囲気の映画だが、緊張感がとぎれることがない。

 片方は水辺、もう片方は美しい住宅地、その間を列車が走っていく風景がとてもきれいで、見るものの心を惹き付ける。

 ヒロインの一人、レイチェルはこの列車から一軒の住宅地を見、そこで仲良く暮らす夫婦を見、羨望していた。レイチェル自身はアルコール中毒で、結婚生活が破綻した身だった。レイチェルが羨んでいる夫婦の二軒隣には、かつてのレイチェルが暮らしていた家があり、夫は新しい妻アンと赤ん坊と暮らしているのだ。

 ある日、レイチェルは「理想の夫婦」の妻が他の男性と抱き合っているのを列車の窓から目撃、怒りにかられる。やがてレイチェルにとっての理想の妻「メガン」が失踪する。

 レイチェルがひたすら危うい。列車から見かけただけの夫婦に理想を(妄想を、というべきか)抱き過ぎだし、メガン失踪ののちには探偵遊戯をはじめるが、アルコール中毒ゆえ記憶に欠落がある彼女は、警察にとっても、事件関係者にとっても、そして観客にとっても「信頼できない語り手」なのである。

 このレイチェルがある事実を知って以来(やっぱり電車の中でのことだ)、ストーリーが急展開していく。終盤で「あなたも見ていないでもっと早く警察に連絡しろよ」という突っ込みが脳裏から離れなかった。

 傑作である。

 

ガール・オン・ザ・トレイン(上) (講談社文庫)

ガール・オン・ザ・トレイン(下) (講談社文庫)