ザ・クリーナー 消された殺人/レニー・ハーリン監督
小山正『ミステリ映画の大海の中で』で知った犯罪映画。
著者とは映画の趣味がいま一つ合わないのか、私にとっては『ミステリ映画の大海の中で』はとても当たり外れのあるガイドブックだ。
しかし、この『ザ・クリーナー 消された殺人』は当たりだった。
いたって地味な話だし、犯人には意外性はないし、後味もよろしくはない、これだけ負ともなる条件を抱えながら面白い。こんな表現が許されるならば、ヒッチコック風ハードボイルドと呼びたくなるような味わいがある。
アメリカ東海岸の寂れた町ブラウンストーン。元警察官のトムは、犯罪や自殺、事故現場など特殊な場所を清める清掃会社を営みながら、十四歳の娘ローズと暮らしていた。かつて刑事時代に強盗に妻が殺され、その犯人が獄中で殺されたことが一つの原因で、犯人殺しの疑惑をかけられたトムは警察を去り、かつての相棒エディとも連絡を絶った。
ある日、トムの会社に一件の依頼が入る。誰もいない豪邸の居間の清掃だ。それも鮮血に染まった居間の。やがてトムは、その豪邸の主人が警察内部の大掛かりな汚職事件の関係者であり、しかも失踪していることを知る。トムは、この失踪事件について調べ始める。
しかし、その調査を阻むのは権力ばかりではない、トム自身の過去の悪行でもあった。
苦いラストが余韻を残す佳作。ある人物の健気さと、それに反するような運命の幸薄さに哀れみが湧く。
映画とは取り立てて関係ないことなのだけれど、監督がフィンランド人だと知って驚く。てっきりアメリカ人だと思っていた。