FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

拾った女/チャールズ・ウィルフォード

 サンドリーヌ・コレット『ささやかな手記』やサンドラ・ブラウン『さまよう記憶』、キャシー・アンズワース『埋葬された夏』など2016年度私的ベストミステリが集まりつつあるが、このチャールズ・ウィルフォード『拾った女』のその中の1冊となるだろう。
 よくできたノワール小説、悲痛な恋愛小説として楽しめる本書だが、ラスト2行で明かされる事実にのけぞるはず。ところで解説で杉江松恋が触れていたのは(B・S・バリンジャー『赤毛の男の妻』)だろうか。
 軽く『拾った女』のあらすじに触れていく。今から50年ほど前のアメリカ。絵が描けなくなった元画家ハリーと、彼が拾った女、ブロンドの美しい女ヘレン。ヘレンはアルコール中毒患者だった。死に魅せられる2人は愛し合いながらも破滅へとひた走っていく。
 しかしこの物語をたどっていくと、読者の頭の中にはたびたび小さなクエスチョンマークが浮かぶはず。
 なぜハリーとヘレンのカップルはたびたび絡まれるのか。
 そして(ヘレンがアルコール中毒のため仕方ないとは言え)ヘレンの母親は、ハリーとの同棲にどうしてこんな辛辣な態度を示すのか。
 物語の最後の最後で理由を知ったときには、強い驚きとともになんとも言えない感情が込み上げてくるはず。
 傑作。