星屑の入り江で/リサ・クレイパス
ネットスラング、それももしかしたらもう古いかもしれないネットスラングで、「もにょる」という表現がある。大雑把に解説すれば「マイナスの意味で微妙な創作物に触れたときに生じる、むず痒い感じ」ということになる。
翻訳されたミステリ小説を読んでいるとき、時折この「もにょる」感じに襲われる。色んなパターンがあるが、それは日本人以外の作者が書いた日本人特有の文化や精神的なありように触れたとき、それが半端なものだとこの「もにょる」状態になる。
例えばゼンとかブシドーとか。ウィリアム・アイリッシュ「ヨシハラ殺人事件」ほど飛んでいると、それはかえってギャグになるので、もにょらない。
さてリサ・クレイパスの“フライデー・ハーバー”シリーズ第4作である『星屑
の入り江で』である。ヒーローが日本人の血を引いているという設定なので、やはり半端に日本文化に触れているため、この「もにょる」感じになる。
ヒーローが世界的に有名なゲームクリエイターでだという設定は、やはり日本のオタク文化が盛ん(ヒーローはゲームばかりだけではなく、日本のアニメにも詳しい)であることから来ているのだろうが、そちらだけに留めておけば良かったのに、と思う。
作品の中でどんな「日本文化」が登場するかは読んでからのお楽しみだが、私の目にはやや外しているように見える。これまで良作が多いシリーズだけに残念だった。
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