FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

フッテージ/スコット・デリクソン監督

 映画のみに発揮されるわけではないが、世の中には厄介な数値「期待値」というものがある。このところの日記を読み返してみると、ずいぶんとこの「期待値」に振り回され、同じぐらいの出来栄えの映画にずいぶん違った態度の感想文を書いている。初心に戻り、事前に情報などまったく入れぬようにしてホラー映画を見るのが正しい態度なのかもしれないが、そうしたらそうしたらでクズを掴んでしまうことが圧倒的に多くなるのが、悩ましいところである。
 前置きが長くなったが、スコット・デリクソン監督『フッテージ』の感想である。
 スコット・デリクソン監督と言えば、悪魔祓いと法廷劇という異色の組み合わせで傑作『エミリー・ローズ』を生み出した監督である。とても面白かったので、当然この『フッテージ』にも大きな期待値をかけていた。
 結果と言えば……多分これほど期待をかけなければもっと評価を上げていただろうな、という作品だった。
 最初の掴みはいい。以前暮らしていた一家がおぞましい死に方をし、一番小さな娘だけが消えてしまった家に、あえて事情を知りながら引っ越してきた男とその家族。それは凶悪犯罪を扱ったノンフィクションで、かつてのベストセラーをものにしたオズワルドとその妻子だった。いまやスランプに焦り経済的な困窮にも悩まされている。あえて新居を選んだ理由は、以前の住人の怪死の原因を突き止め、もう一度名声を取り戻すためだった。
 やがてオズワルドは屋根裏部屋で、映写機と8ミリフィルムを見つける。フィルムには前住人を始め、いくつもの幸福そうな家族が、一転して虐殺されていく様子が映し出されていた。
 この部分が前半の半ばといった辺りなのだが、この場面は確かに面白く、また戦慄を感じた。オズワルドはある人間と、映し出されていた各事件の調査を始めるのだが、残念ながらここからラストまでがやや単調になる。
 サイコサスペンスになるのか、超常現象が絡むホラーになるのか、途中まで分からない展開の神秘性と、8ミリフィルムに映し出されていた各事件の忌まわしさにはなかなかの迫力があった。