FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

危険な愛のいざない/アナ・キャンベル

 ダークで、激しくて、風変わりで、人を選ぶ作風ではあろうが、この作者特有の雰囲気に惹き込まれる読者にとっては、たまらない世界が繰り広げられている。当方にとっては邦訳されている五冊は傑作揃いだ。この『危険な愛のいざない』もまた例外ではない。
 今回のヒロイン、美貌の未亡人ダイアナは管理する領地への執着のあまり、死病を患い、邪悪な魂を有した老侯爵の企みに加担することとなる。侯爵に命じられるまま、アッシュクロフト伯爵を誘惑し、彼の子を身ごもることを決めたのだ。
 通常のロマンス小説ならば、悪女の役どころである。
 通常のロマンス通り、ダイアナとアッシュクロフト伯爵は恋に陥ってしまう。そしてダイアナは伯爵に罪悪感を抱き、激しく煩悶する。
 しかもこの老侯爵の陰謀の全貌は、読者にさえなかなか明らかとならない。なぜ、アッシュクロフト伯爵の子を妊娠したならば、病める老侯爵と婚姻でき、領地の女主人となりえるのか。老侯爵は土地の領主だが、アッシュクロフト伯爵とこの地に関わりはないはずだ。
 この理由が分かったとき、思わず膝を打った。アナ・キャンベルが男女のロマンス以外にも得意とする「肉親間の愛憎」が巧みに描かれ、この物語のドラマ性をさらに際立たせている。
 ダイアナの盲目の父親ジョンや、ダイアナの義妹ローラなども、脇をしっかりと固めている。
 官能的で、精神的にハードで、ドラマティックな一冊。
 激しいロマンスとともに愛憎劇が楽しめる傑作。

囚われの愛ゆえに (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

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罪深き愛のゆくえ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

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その心にふれたくて (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

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誘惑は愛のために (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

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